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第6回 グレイシャーの夜空<グレイシャー国立公園その1>

 アイダホ州からモンタナ州に入ったところのキャンプ場をこの日は、7時半 ごろ出た。朝、キャンプ場近くで、自転車に乗った女性に会った。彼女は、グ レイシャー国立公園のローガン・パス(峠)について、すでに苦労して超えて きたスチーブン峠よりの楽だと言っていた。本当かどうか彼女が私と逆の方向 から来たので分からないが、彼女と話して少しは気が楽になった。飛ばしてカ リスペルまで行きたいところだが、カリスペルにはキャンプ場はないようで、 その手前のマックグレゴリーレイクのキャンプ場を目標とした。

 朝食は、「スニッカーズ」だけでは足りず、リビーの町で、パンとバナナを 買って食べた。10時を過ぎていたので、朝食と言うより昼食に近かった。リビ ーから先はほとんど何も家らしい家はなく、西部の田舎のしずかな風景が広が っていた。しかし、程なくして空は曇り始め、雨が降り出した。さわやかな雨 で日本の夏に降る雨のようにムシムシした感じはなかった。雨が止み、再び走 り出した。このあたりまで来ると標高も1,000mを越え始め、高原のような空気 に変わり始めた。
 3時ごろハーピースインに着き、夕食用のスパゲティーを買った。ここから すぐにマックグレゴリーレイクのキャンプ場に着くと思ったが、思ったより遠 く、さらに登りの道だった。

 終わりのほうで油断をし、ようやく4時半キャンプ場に着く。でも、どうや らキャンプ場でキャンプをしているのが私だけのようで、静か。でもあまりき れいではなく、蚊も多かった。

 翌朝、前の日と同じく7時半にキャンプ場を出た。
 カリスペルは、30mile先。空はすっきりしない。でも、サイクリングには、 いい曇り具合で、道も下り気味でスタート。そんなこともあり、目標時間より も早く、カリスペルの町に着いた。スーパーで、鶏肉と野菜のお弁当を買うが、 これがあまりおいしくない。
 遅い朝食の後は、晴れてきたが、ここから平地で向かい風があり、進みにく い。途中、グリーンエバーという町のスポーツ店で、靴下とスプーンセットを 買う。

 その後、ダラダラと30mile走り、2時ごろようやく、グレイシャー国立公園 に入る。公園に入ると結構、人がいた。まず、この日泊まるキャンプ場をアパ ガーのキャンプ場に決めた。まちがって、キャンプ場代を12ドル(自動車で泊 まる人の料金)払ってしまったが、どうやら自転車乗り(biker)は、1泊3ド ルでよかったらしく、パークレンジャーに言って、多く払った分を返してもら った。

 お金の精算をした後、自分のテントサイトに戻ると、隣には、アメリカ人ら しくない、自転車に乗ってきたような男性がいた。話してみると、カリフォル ニアに住んでいるロシア人で、アメリカが誇る石油メジャーの一角、エクソン 社に勤めている人だった。どうやら、長期の休みをとり、3ヶ月の旅をしてい るとのこと。
 彼とそんな話をしているともう一人男性が隣にやってきた。もう一人の彼が 持ってきたビールをご馳走になり、3人で話が盛り上がった。後から来た人は、 オランダ人で彼もまた、休みを使い長旅をしているようだった。彼らと共に、 夕方行なわれていた、パークレンジャーによるプログラム(アメリカの国立公 園では、観光シーズンになると毎日のようにパークレンジャーによる教育プロ グラムが行なわれていて、ガイドツアーや動物や地質などの自然解説や楽器演 奏などのショーが無料で体験できる)に参加し、グレイシャーの山々の成り立 ちを教えてもらった。

 その後、酔った勢いもあり、3人で(公園からほんの少し出た)3mile先にあ るプールバーに歩いて行った。バーでビールをまたご馳走になり、世界共通の ゲームであるビリヤードを3人でやった。勝負は、私の惨敗だったが、すっか り出来上がってしまい。時刻はすでに次の日になっていた。
 バー閉店間際、3人で再び、1時間以上かけ3mileの道をおぼつかない足で歩 いて帰った。月明かりしかない、薄暗い森の真ん中を貫く道を3人で、時々、 自分の旅の話をしながら・・・
 映画の「スタンド・バイ・ミー」の世界がこの時、私の中では広がっていた。

 翌朝、アルコールのせいか何度か目が覚めた。それでも8時ごろ起き、テン トを片付け、パンを食べ始めた。ここで、昨夜私と飲んでいた2人も目を覚ま し起きた。彼らは、食事をしないままテントを片付け始め、それぞれ今日の目 的地がばらばらだったので、10時前に別れの挨拶をして、キャンプ場を出た。

 私のこの日のルートは、自転車での走行が15mile程度で、あとはトレッキン グ(歩き)の予定にした。途中、レイク・マクドナルドで湖を見た。とてもき れいな湖だった。売店で、パンとハムを買い、この日泊まる、アバランチのキ ャンプ場に向かった。キャンプ場はすんなりとれ、昼食としてパン1つを食べ、 チャリをキャンプ場に置き、靴や装備を整え、レイク・アバランチへのトレイ ルに向かった。道は、自然の多い、川沿いのトレイルであったが、思いのほか 早く着くことができた。1時間ほどで、湖の見えるポイントへ。湖からの眺め はまるで絵葉書のようで、正面の氷河が頂きにある山々からいくつもの川が滝 のように流れていた。日本にはなかなか見られない風景だ。
 湖で15分ほど休憩をして、1時間ほどでキャンプ場に帰ってきた。この日は、 走行距離も短く、アップダウンもほとんどなく、散策程度でのんびりと過した が、次はいよいよいままでで最大の難関の峠越えだ。


●11日目 8/6、くもり時々雨のちはれ、走行距離79.37mile
 Kootenai River Campground(MT)→Libby(MT)→
 Mc Gregory Lake Campground(MT)
●12日目 8/7、くもりのちはれ、走行距離70.64mile
 Mc Gregory Lake Campground(MT)→Kalispell(MT)→
 Apgar Campground(MT)
●13日目 8/8、くもり、走行距離15.23mile
 Apgar Campground(MT)→Avalanche Creek Campground(MT)・・・
 Avalanche Lake(MT)・・・Avalanche Creek Campground(MT)
  ⇒ここまでの走行距離597.3mile


<第7回へつづく・・・>

クリックすると拡大地図が出ます

8/6~8/8のルート地図(クリックすると拡大された地図が出ます)


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グレイシャー国立公園内の地図(クリックすると拡大された地図が出ます)


グレーシャー国立公園の入口の看板(Glacier N.P.、1999年8月7日) キャンプ場で知り合った2人と共に(Apgar Campground、1999年8月7日)

国立公園入口の看板<左>、キャンプ場で知り合った2人と<右>(Glacier N.P.)

かわいいレンジャーさんが熊の生態を説明(Apgar Campground、1999年8月7日) Avalanche Lakeからの美しい風景(Avalanche Lake、1999年8月8日)

かわいいレンジャーさん<左>とAvalanche Lakeからの風景<右>(Glacier N.P.)

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